京都メカニズム情報プラットフォーム
コンサルタントの現場から
CDMを通じた地域社会と地球規模(時間軸空間軸)の両面での持続可能な社会構築を目指して
株式会社エックス都市研究所 
環境開発本部戦略的バイオマスチーム  河村 愛

「地域が抱える様々な問題に対して『環境』を切り口に人の役に立ちたい」という気持ちからエックス都市研究所に入社しました。すぐに携わった仕事のひとつがパームオイル廃液からガス回収・発電利用を行なうCDM事業の調査で、これが私とCDMの出会いでした。それ以来、CDM事業支援を行なっていますが、プロジェクトとして有望なものは工場単位の比較的大きなプロジェクトが主となり、地域貢献型の小規模なプロジェクトは、必要な手間やコストに対するクレジット獲得量が小さすぎるため、現地のニーズが高くてもCDMとしての実施には限界がありました。その限界に対して新たに登場したのがプログラム型CDMです。これにより、プログラム活動をCDM登録すれば、プログラムの下に実施される個別プロジェクトは簡易な手続きで行うことが可能となり、小規模で多数存在するプロジェクトの実施が容易となったのです。プログラム型CDMにより、私が考える地域への貢献とCDMが漸く繋がりました。以下に、私が今取り組んでいる2つのプロジェクトをご紹介します。

1.フィリピン・ボホール州コミュニティーコンポストプロジェクト

現在、フィリピンのボホール州において鹿島建設鰍ニ共に家庭ごみのコンポスト事業に取組んでいます。フィリピンでは、ごみ問題が深刻で、政府はゴミ減量やリサイクルを推進していますが、あまり進んでいません。コンポスト事業は、ごみを減量すると共に、処分場で発生するメタン削減、地域の衛生環境改善、化学肥料削減、地域雇用増など、様々な効果が期待されます。ボホール州は、東南アジアで自治体として初めてISO14001を取得するなど、環境対策に熱心なことで有名ですが、そんなボホール州でもコンポスト事業は資金面で難航していました。このような矢先、コンポスト化により削減される温室効果ガスに対してお金を出すという日本からの申し出はボホール州政府にとってはまさに渡りに船だったわけです。

2008年2月に開催したセミナーには、48自治体及び関係団体から150名以上の参加者を得ました。参加者数に本プロジェクトに対する関心度の高さを改めて実感すると共に、普段は穏やかなボホール州政府のMs.Bunadoの熱弁も圧巻でした。セミナー後に披露された芸達者なセミナー参加者達の歌や演奏も素晴らしく、こうした地域の人々の期待を実感する瞬間は、この仕事の醍醐味でもあり、それが仕事対する使命感にも繋がります。今後、各論的な話になるにつれ、住民間や自治体間の利害対立も予想され、事業化までの道程は険しいかもしれませんが、地道に議論を重ねて少しでも早い事業化に繋げていきたいです。

セミナーの様子の画像
ミミズを利用したコンポストの画像
セミナーの様子
ミミズを利用したコンポスト

2.持続可能なバイオ燃料生産

アジアのバイオマスは、資源としてのポテンシャルが大きく、エネルギー利用によって化石燃料使用削減に寄与する一方で、熱帯林伐採や生物多様性喪失など持続不可能な農地の開発形態が深刻化しています。私は、これまでの経験からバイオマス利用で重要な視点は「資源確保」と「サステイナビリティ」だと感じています。

例えば、インドネシア政府は、農村部のエネルギー自給・貧困対策として、ヤトロファと呼ばれる油糧作物の栽培を奨励しています。その理由は、ヤトロファは成長が早くパームと違って小農に適すること、荒廃地や乾燥地での栽培が可能とされることなどによります。一方、インドネシアでは森林の違法伐採や森林火災後にアランアラン(雑草)が繁茂したために利用が困難となった荒廃地が数百万ha規模で拡がっています。このような荒廃地や乾燥地など未利用地の生産性を高め、原油高騰で苦しむ農村部のエネルギー自給に貢献できるようなCDM事業の形成ができないものか。

農園開発を伴うバイオ燃料CDMに関しては、オプションが限定されていましたが、2007年11月に小規模方法論III.T「植物油生産及び輸送用利用」が承認されたことにより、プログラム型CDMと併せた小規模の輸送用燃料利用CDMの取組みが可能となります。バイオ燃料は、食糧との競合などの問題も指摘されていますが、何万年、何千万年もの年月をかけて作られた地球資源をたった数百年で使い尽そうとしている現状において、どの土地で何をどのように育て、どう利用するかによって、大きな意義を生み得るものと考えています。これまでの現場で得たサステイナビリティに関する知見を生かして、地域社会と地球規模の両面で持続可能性を追求できるバイオ燃料プロジェクトを推進することが私の今の目標です。

インドネシアのアランアラン草地の画像
ヤトロファの実の画像
インドネシアのアランアラン草地
ヤトロファの実


2008年3月31日