京都メカニズム情報プラットフォーム
金融・法務の現場から

(株)日本スマートエナジー
代表取締役       大串卓矢

ファンド構成日本スマートエナジーの業務
日本スマートエナジー(JSE)は国内外の地球温暖化防止プロジェクトへ投資することを主要業務としています。
途上国ではCDMに対する理解不足や、事業実施者の信用力不足のために事業資金が足りないプロジェクトが数多くあり、リスクマネーの供給が望まれています。そこで、JSEでは石炭、プラント、エネルギー専門家やエンジニア、海外投資の専門家、会計・税務のエキスパートで編成した「目利きチーム」により、これらのプロジェクトスクリーニングを実施し、有望であるが資金の足りないプロジェクトへの投資および経営者の派遣を行います。CDM/JIを通じて日本の技術や経営手法を世界に広めることはJSEのミッションであり、CDMの精神を具現化したものであると考えています。

投資という機能
マイナス6%という京都議定書目標達成のためには京都メカニズムを通じて海外からクレジットを調達しなければなりません。かなりざっくりとらえると、日本は官・民あわせて年間1億トンのCO2クレジットを海外から調達しなければなりませんが、この量を平均1,000円/トン で調達したと仮定すると、5年間では5,000億円の予算が必要となります。この5,000億円を単にクレジット購入に使用しただけでは、このお金は単なる日本のGDPの漏出要因です。

そこで、JSEはリスクマネーの供給という投資の本来の機能を活かし、世界で行われる各種のプロジェクトのパートナーとなり、事業実施の機会を日本の企業へ提供しています。そして、日本の技術、経営手法などの良さをわかってもらうことで、日本の活躍の場を増やしています。どの世界でも、不安定なときに一緒にがんばってくれた人とは親しい友達になり、一緒にビジネスを続けたいと願うものです。また、日本企業にとっても、CDM/JIという、得意とする環境技術や知識を活用できる事業機会を積極的に活用しいかなくてはならないと考えています。いくら優れた技術を持っていたとしても、それを活用する場所がなければ、その技術は廃れてしまうからです。

今後のCDM開発と投資
今後は海外でCDM/JIが次々に実行に移される段階に移行します。すると、国連に登録されたプロジェクトであっても事業の失敗のため、予定した量のクレジットを生じない可能性があります。これからは良質なプロジェクト、粗悪なプロジェクトの選別が重要になり、金融の世界では、真の「目利き力」を持つことが改めて着目されるでしょう。

さらに、海外だけでなく、国内でもCO2に配慮しなければ大きなプロジェクト開発は実施するのが難しくなるでしょう。例えば、新たに石炭発電所を作る場合や廃棄物の処分場の開発には、二酸化炭素やメタン排出をオフセットしているかどうかは国内のプロジェクトであっても、重要な許認可の審査ポイントとなるでしょう。これからは、地球環境が持つ二酸化炭素処理能力を見極めながら化石燃料をいかに効率的に使用するのかが重要になるからです。このような世界を炭素制約社会といいます。

JSEはCDM/JIのみならず国内のエネルギー開発案件のCO2問題解決も担当しますが、こうした問題を考えるとき、我々はまさに地球の環境をマネジメントしながら発展することを考えなければならない時代に突入したことを感じます。排出権の本質はまさに環境と経済を両立させることを人為的に行うことであると考えています。このあたりは、拙著「図解排出権のしくみ」にも書きましたので参考にしてください。

最後に、日本の企業のCDMの活用について述べます。確かに海外投資はリスクが伴いますし、様々な失敗を経験するはずです。中国投資で失敗した経験が後を引いている企業も多いでしょう。しかし、モノ作りの場は、日本から中国その他のアジア諸国へ移っていく大きな流れには逆らいようがありません。モノ作りは良質で安い人件費を持った国が有利だからです。それに対処するため、仕事の形態をより知識集約的にし、それを輸出する必要があります。そのトレンドのなかで環境技術を持つ企業はCDMという機会をうまく捉え、積極的に海外に事業実施の場を求めていくこと、もっているノウハウをキャッシュに変えることを心掛けるべきだと考えます。企業はグローバルマーケットのなかで真に逞しくなっていくのです。

2006年11月24日