京都メカニズム情報プラットフォーム
運営組織(OE・DOE)の現場から

JQA(財団法人日本品質保証機構)
CDM審査員 鋤柄耕治

1.京都議定書発効で変化したビジネス環境について

2005年2月16日に京都議定書が発効されて1年以上が経ちました。CDMに関しては、発効の少し前からCDMプロジェクトの登録スキームに基づき数件のCDMプロジェクトは登録されていました。その後、議定書が発効されてから半年たった2005年8月までのCDMプロジェクト登録件数が15件ほどであったのに対し、2005年9月から2006年2月までの次の半年では90件ほどの登録があり、プロジェクト登録数は急激に増えました。さらにその後も2006年2月には25件、3月には月間最多の45件の登録があり、CDMプロジェクト関係者はプロジェクトの実施に向けて活発に動いているのが伺えます。実際に当機構受注の有効化審査(Validation)件数も着実に増えてきています。
このような登録案件増加の理由としては以下のようなことが考えられます。

  1. 承認された方法論の数が増え(2006年4月末で、方法論で29件、統合方法論で9件まで認められています。ただし一部重複するものは欠番になっています。)類似のプロジェクトが提出し易くなった。
  2. CDMプロジェクト登録までの一連のスキームが確立し、実際に運用されたことでプロジェクト実施者(PP)側の登録までの目処が立つようになった。
  3. 投資国の決まらないホスト国主導のCDMプロジェクトでも登録が可能であることが認められた
    (このようなプロジェクトのことを「ユニラテラル・プロジェクト」と呼ばれています)。
  4. 各国の指定国家機関(DNA)の体制が整備され政府承認書の取得が容易になった。
    このようにCDMプロジェクトの登録までのスキームは、ほぼ軌道に乗って回り始めたといえます。

2.プロジェクトサイト等へのご出張先で驚いたこと感じたこと

CDMプロジェクトの計画の妥当性を審査する有効化審査(Validation)の場合、必要に応じてホスト国の背景調査およびフォローアップインタビューを行うため、プロジェクトサイトやホスト国の指定国家機関(DNA)等を訪問する現地調査を実施します。特にホスト国のポリシーや持続可能な発展(Sustainable Development: SD)、環境法令の遵守及びステークホルダーコメントの収集の適切性を確認するとともに、実際にプロジェクトサイトに行き、PPに会ってプロジェクトの実施計画の詳細について確認します。
特に、ホスト国の持続可能な発展(SD)に対する考え方は重要で、その国の政府承認スキームに影響してきます。例えば、バイオマス発電プロジェクトを例にとると、収穫後に農地に残されている米のモミガラやサトウキビの枯葉部分、菜種わら等を収集し燃料として発電を行うプロジェクトがありますが、ホスト国によっては、これらの農地に残した物は鋤き込むことで農地の肥料となるため、農地から取り去ることはその農地を痩せさせてしまい、結果として国の持続可能な発展に反するという意見が現地でのインタビューで聞かれました。これらの農地に残された物は一般に農業廃棄物と呼ばれ、取り除かれることが当然のことと思いがちですが、ホスト国によっては必ずしもそうでないことを現地へ行ってみて気付かされました。一方で、別の国の農業担当者のコメントでは、農業廃棄物を農地から除去しても影響は無く逆に農地に残しておくことは害虫発生の原因となるという意見もあり、国により考え方に違いがありました。
結論としては除去する量のバランスが重要であるといえますが、そのバランスはそれぞれのホスト国の考え方に左右されるものであり一律には決まらないことは考えさせられました。

3.DOE/AEならではの苦労、やりがいについて

DOE/AEの業務の多くは有効化審査(Validation)及び検証(Verification)/認証(Certification) といった審査業務が中心ではありますが、審査以外でプロジェクト実施者(PP)とCDM事務局とをつなぐ業務も重要です。
例えば、新方法論(New Methodology)の提出の申請から方法論パネルによる判定結果の受取と実施者への連絡、有効化審査中の公開されたプロジェクト設計書(PDD)に対するパブリックコメントの受取と対応、登録(Registration)手続き、さらには再審査要請(Request for Review)の際の対応といったものです。これらの手続きはDOEを通して事務局へ、またその結果をプロジェクト実施者(PP)へ伝えます。
こういった遣り取りは、通常は電子メールにて事務局と連絡を取りますが、緊急の場合に電話を使うこともあります。その場合、CDM事務局はドイツのボンにあり、日本との時差は8時間、日本の朝9時はボンの真夜中の1時、日本の夕方5時でようやく現地は9時なので、事務局に電話をするにも日本の夕方まで待たないと連絡が取り難いのが実際です。また、通常ボンで行われるCDM理事会のオブザーバー参加やDOE/AE会議に出席するのも日本からでは一苦労です。このように、コミュニケーションの点では、日本のDOEはしんどいところではあります。
さて、昨年のEB21の決定で、新方法論(New Methodology)の提出費用が、一件につき1,000US$必要になりました。
また、昨年のCOP/MOP1では登録の際に必要な登録費用(Registration fee)の改訂がありました。改訂の内容ですが、第23回理事会で登録費用は以下のようになっています。

  1. 年平均予想削減量が15,000t-CO2未満では登録費用は必要ない。
  2. 年平均予想削減量が15,000t-CO2を超える場合は、最初の15,000t-CO2までは1t当たり0.1US$、15,000t-CO2を超えると1t当たり0.2US$で積算する。
  3. 登録費用の上限は350,000US$とする

これら費用の支払いはプロジェクト実施者(PP)が行いますが、支払い先や支払い番号の連絡や、送金を示す証拠の送付はDOEを通して行われます。
このようなプロジェクト実施者に直接係わる変更点以外にも、審査に関する情報として、約2ヶ月に1度のペースで開かれる方法論パネル(Meth Panel)で提案された方法論の審議が行われ、その次の理事会での決定を経て次々と新たな方法論が追加、あるいは類似の方法論が統合されています。また、同じく約2ヶ月に1度の理事会ではCDMに関するルールの明確化や、新たなルールの審議が行われ決定されます。このようにめまぐるしく変わる最新情報をウォッチし、審査に的確に反映させていくことは結構骨が折れる作業で、日々送られてくるCDM事務局からのメールや理事会のレポート等と毎日格闘しています。
以上のような話は尽きないのですが、登録されたCDMプロジェクトの実施により途上国のSDに寄与しながら温室効果ガス(GHG)の排出削減が行われる一連のCDMスキームの中で、DOEとして地球温暖化防止に深く関わっていることを実感できるのは、やりがいに通じるものがあります。

2006年5月1日